「さわやか号」の拡充という位置づけで、10月に乗合タクシーの2路線を新たに開設しました。
これまで、旧3町ではそれぞれ福祉バスやコミュニティバスが運営されていましたが、有料・無料の違いがあったり運行本数の違いがあったりという不整合を残したまま合併しましたので、制度の統合を含め、さらに公共交通体制を充実させるべく検討を続けてきた一つの成果です。
これまでバス路線の空白地帯であった地域に公共交通を導入するということを一つの方向性として決めましたので、実施にあたって効果や優先度などを精査した結果、まずは安井・神戸地区と上三輪・中三輪地区からスタートすることになりました。当初の案としては来春に開設するという計画が上がってきたところでしたが、こういうことは一刻も早い方がいいので無理を言って担当者に骨を折ってもらい、10月からスタートできることになりました。
出発式会場には多くの地元の方が来ておられて、いろいろと話をする機会がありました。
上三輪・中三輪地区の会場では、この地区に嫁いできて52年になるという方が、「嫁いでくるときに、遠からずこの地域にはバスが通るからと言われちょった。その後も、もうすぐバスが通るからと何度も聞かされて、さらにはゴルフ場ができるときも今度こそ通るからと言われ、騙され続けて52年が経ったとよ。」と話しておられました。それを聞いていた別のおばあちゃんが横から、「私はもう60年騙されたとよ。」とダメ押しの一言。ずいぶんこの日を待ち焦がれておられたんだなと痛いほど感じました。
ここだけが特殊な地域というわけでは無いと思います。一地域でまとまった戸数になるかどうかは別にしても、公共交通機関が通っていない地域はまだまだあるでしょうし、それぞれにこうした思いを抱えておられるでしょう。
今回の路線開設は、「これまで地域から強い要望が上がってきていて、それに対処するために事業化した」ということではありません。ただ、この話のように、地域の中に入ってよくよく聞いてみると、強いニーズがあるということがわかります。
現在各地でまちづくり懇談会を開催している最中ですが、そうした場においては多くの方からさまざまなご意見をいただきます。これは顕在化した市民ニーズということになりますが、私たちは、ともすればそうして顕在化した声だけを市民ニーズと思ってしまいがちだと言えるかもしれません。要望に応えての対処ということだけですと、どうしても仕事の姿勢が受身にもなります。もっと意地悪く言えば、「はっきりと声にして当局にぶつけられるニーズさえ満たしていれば文句は言われない」という意識すら我々の中にあるかもしれません。例えば、「道路を造ってくれ」というようなことは顕在化しやすいわけですが、そういう話だけではなく、声なき声を汲み取ることが大事だとあらためて思います。
また、市民の皆さんの側では課題だけがはっきりしていて解決の方策は見いだせていない場合もあるでしょうから、市役所の側から足を踏み込む必要がある場合も多いのではないかと思います。潜在ニーズまで含めて、しっかりとした目的意識を持った仕事をしていきましょう。
さて、公共交通機関を拡充する目的ですが、先述のように地元の皆さんの利便性を高めるためということが当然第一ですけれども、市街地の活性化のためでもあります。「中心市街地の活性化」ということを市政の大きな課題として掲げておりますが、これは端的に言えば、街の中心部に人の姿を増やすということだろうと思います。少子高齢化が進んで、自身で車の運転ができないお年寄りも増えてきています。バスがなければ街の中になかなか出ていけないという方は多いのですから、公共交通機関の拡充が中心市街地の活性化に大きく関わってくることになります。
先日、中心市街地活性化について関東学院大学の横森豊雄先生の講演会を開催し、全国各地でいわゆる「コンパクトシティ」づくりがどんなふうに展開されているかお話しいただいたところですが、特に富山市における取り組みに興味をひかれました。
「団子の串刺し」というものです。
「団子」とは中心市街地であり周辺市街地であるわけですが、それらを公共交通機関という「串」で突き刺しつないでいくという考え方のまちづくりです。それぞれの「団子」の活性化を図りながらもいかに市民の流動性を高めるかというところに力点があり、富山市の場合はLRT(近代的路面電車)がこの役を担っています。
延岡市の場合はどうしてもバスや乗り合いタクシーなどということにならざるを得ませんが、財政状況が厳しいなか、少しでも多く公共交通機関で中心市街地や周辺市街地、あるいは住居地域などをつないでいき、その中で病院への通院や買い物、あるいは公共施設等に行きたいというニーズを満たせるようにしていきたいものだと思います。