皆さんおはようございます。市長の首藤です。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉があります。
物事を判断する際に、経験というのは大きな手がかりになります。しかし、拠るべき自分自身の過去の経験は有限ですから、愚者の判断はどうも危なっかしい。これに比べて、歴史というのは他者の経験(ケーススタディ)の宝庫なのだと考えれば、その圧倒的な情報に基づく賢者の判断は正しい場合が多いということでしょう。ここでいう歴史とは、他者の事例のことだと考えればいいと思います。
私たちが延岡市役所の中で仕事をするにあたり、「どうすればもっと良い仕事をすることができるのか」ということについて、積極的に他者に学びましょう。
以前からお話をしていますNew Public Management(NPM)についてもその観点から捉えてもらえるといいのかなと思います。
また、歴史といっても良い例と悪い例の両方があると思いますが、夕張市は悪い例の筆頭でしょう。
夕張市が破綻に至るまでの過程においてはさまざまな要因が絡み合っているわけですが、その土壌として、組織内の危機感が決定的に欠如していたことが最大の問題だったのではないかと思います。
すなわち、危機感がないことが一番の危機となると言いたいのです。
危機意識を持っている人間には、「こういう仕事の仕方はまずいのではないか?」「なぜこうなったのか?」「もっと良いやり方はないか?」というふうに、身の回りに起こる様々なことに対して「気付き」があるはずです。この「気付き」がなければ改革はありえません。
民間では、業界No.1企業はみな強い危機感を持っているとよく言われます。一番強い企業がなぜ一番強い危機感を持つのかちょっと不思議な気もしますが、実はこれは裏返しの論理であって、本当のところ、一番強い危機感を持っているから一番強い企業になっているということなのでしょう。
本当は危機感を持たなければいけない企業が危機感を持っていない。一番危機感を持たなければならない自治体が危機感を持っていない。そうした現状があるのではないかと思います。外からは危機的な状況だと見えても、中にいる人は意外なほど危機感が希薄であることは往々にしてあります。だからこそ、中からの変革の動きが起こってきにくいという構図になるのかもしれません。
私たち延岡市役所職員が、こうした危機感をしっかり持たなければいけない時期に来ています。財政的なことだけではなく自分たちの仕事の仕方全般にわたって、「これで良いのだろうか」と事あるごとに見つめ直す風土を築きましょう。それを我々の組織文化としたいと考えます。
他方、良い例として、日本企業の代表格であるトヨタを挙げたいと思います。
トヨタは組織運営が非常にうまくいっている代表例ですが、トヨタの渡辺社長の言葉に「仲良く喧嘩せよ」というものがあります。これは、製造部門、設計部門、営業部門などの間で、「なぜこんなややこしい設計にするんだ。もっとシンプルにすれば原価低減が図れるではないか!」とか、「今ユーザーが求めているのはこういうデザインなんだ!」というように、部門の垣根を越えて旺盛に議論をせよということです。これが非常に活発に、日常的に、当たり前のように行われていることが強さの源泉なのだと指摘する向きもあります。
良い仕事をするために、上司が部下を叱ったり部下が上司に意見具申をするということは当たり前として、さらに部門を越えて良い意味での喧嘩をすることが大事であると渡辺社長は言っています。
私たちもこれに学びたいものでありますし、我々の組織文化としたいことのひとつです。
過去に横領事件や不祥事などが起こったことについて、以前紹介したハインリッヒの法則(1:29:300の法則)を想起していただきたいと思います。このような事件は「1」の部分であり、もう少し軽い不都合が比率として「29」くらい起こっており、さらに軽微な「ヒヤリ」「ハッと」「気がかり」というレベルの出来事、いわば仕事への取組み姿勢のルーズさを示す現象が300倍もあるのではないかと思うべきです。たとえば、ちょっとした公私混同が黙認されるような職場環境になっていはしないか。こういうところから危機意識を持っていただきたいと思います。
良い仕事をするということを私たちの誇りにしたいと思いますし、そのために頑張っていきたいと思います。失敗をしないことに価値があるのではなく、良い仕事をすることに価値があるわけですから、仲良く喧嘩をしていきたいと思います。危機感をみなで共有し、部門間の壁を越えて議論するという組織文化を育んでいければと思います。