市職員の皆さんへ
皆さんおはようございます。市長の首藤です。
10月23日に行財政改革推進委員会から本市の行財政改革について答申をいただき、それを受けて行財政改革推進本部として行財政改革大綱を策定し、同時に実施計画と財政健全化計画を策定しました。
話は少し本論から外れますが、現代は公共心というものが非常に薄くなっている時代だと言われます。私たちは公共の仕事に携わる身ですから、こうした公の精神というものについては、一般の方々以上にしっかりと持っていなければならないと思います。
では、公の精神とはどういうものなのか。
よく、街をもっときれいにしましょうとか、ゴミをみんなで拾いましょうという活動が行われますが、それ以前の問題として、公の空間を汚す人がこんなにも多いのは残念なことです。自分の車の中ではスリッパに履き替えるくらいに非常にきれいにしているのに、車の外には窓から平気でタバコの吸殻や空き缶を捨てたりする人さえ、時おり目に付きます。車の中をきれいするという感覚と、窓の外に吸殻などを捨てて平然としている感覚とのギャップは何なのかということについて、あるシンポジウムで話題になったことがあります。
医師で登山家の今井道子さんが、「そういう人は、空間の認識の仕方が違うのではないか。自分の車の中は自分自身の空間だけれど、車外は他人の空間だという感覚を持ってしまっているのだろう。つまり、自分の空間、他人の空間という峻別を無意識のうちにしているからではないだろうか。」と分析していました。
この話は示唆に富んでいます。
公の空間を自分自身の空間と思えば大事にするし、他人の空間と思えば粗末にするということであるならば、問題は「公の空間は他人のものではなくて、自分のものでもあるんだ」という感覚を持つことができるかどうかだということです。
このことは、ある意味ではお金についても同様であろうと思います。自分のお金と思えば大事にするが、他人のお金と思えば、ともすれば粗末な使い方をしがちであるということも、人間の心理としてあるのではないかということなのです。
自分たちが年間数百億円というお金を預かりながら運営していくことについて、「私たちが扱っているのは公共のお金である」ということをあらためて認識する必要があると思います。そして、それを自分自身のお金と同様に感ずることが出来れば、おのずと仕事の仕方も変わります。
いわゆるお役所仕事というものへの批判として、「自分の金ならもっと違う使い方をするのではないか」と市民から指摘されることがあります。例えば、昔は、道路舗装の工事をした後、あまり日にちも経たぬうちに同じ所を水道工事で掘り返すなどということがありましたが、もしこれが自分の家の庭の工事であれば、「予算が違うから」とか「担当課が違うから」とは言わずに、どうすれば一番効率的かということを考えながら一回にまとめて工事を行うのが普通です。自分のお金は粗末にしません。
繰り返しますが、「公共の空間は自分自身の空間でもある。」また、「公のお金は自分自身のお金と同じ感覚で扱うべきだ。」という意識を持つことが重要です。これが、普通の市民の目線に沿った、当たり前の金銭感覚に根ざす仕事のありようです。このことを原点として財政健全化に取り組んでほしいと考えます。
金銭感覚について、少し別の観点からも触れておきたいと思います。企業であれば、その会社が社会に生み出す付加価値がその会社の享受できる利益とイコールということになると思いますし、会社の社員であれば、その社員が会社に対して提供する付加価値がその社員の給料とイコールであるべきという考えも成り立ちます。
給料については、例えば「生活給」という側面からの捉え方もありますので、上記のような考え方が100%望ましいとは言いませんが、世間の金銭感覚に即して言えば、「対価としてのお金」という考え方がやはり一般的であろうと思います。
であれば、私たちは、自分自身は給料に見合うだけの仕事をしているだろうかということを折に触れ省みる必要があります。仕事に対する厳しさを持たねばならないということの原点はこのようなところにもあります。
ところで、今回の行財政改革大綱は、市民の代表による行財政改革推進委員会の意見を受けての計画であり、取組項目51項目、職員の削減目標として120名を掲げており、経費についても約9億円の節減効果を目標にしています。
過去、第4次までにわたって行政改革に取り組み、職員の皆さんのご協力をいただきながら相応の成果を挙げることが出来ました。
今回の第5次行財政改革は、このような様々な成果を実現した後の取組みでもあるため非常にハードルの高い目標設定だとは思いますが、延岡市の将来を展望するにあたっては絶対に避けて通れないものです。その取り組みにあたっては職員の皆さんにも大きなご苦労があるものと思いますが、私たちは不退転の決意で臨まなければなりません。皆さんには、財政健全化に対する強い意志をしっかり持ってほしいと思います。これからも職員の皆さんのご協力をいただきながら、市役所全体の気持ちを一つにして取り組んでいきたいと考えています。
ひとつの寓話を紹介します。
ある所で3人のレンガ職人が並んでレンガを積んでいました。そこを通りかかった人がその職人に何をしているのか尋ねたところ、最初の職人は「レンガを積んでいるんだ。」と答えました。二番目の職人は「レンガを積んで壁を作っているんだ。」と答えました。三番目の職人は「レンガを積んで壁を作り、家を建てているんだ。」と答えました。
これは、やっている仕事は同じでも、それぞれの職人の考え方次第で答えが違ってくるということですが、家を造るのだという意識を持ってレンガを積む職人の仕事には、きっと魂がこもっていることでしょう。
各人が担当する一つ一つの行財政改革の取り組みの向こうには素晴らしい将来があるのです。行財政改革の実現に向けては、全職員がそのような次元の高い共通の認識を持って、自らのこととして取り組んでほしいと思います。現在は、非常に厳しくつらい時期ではありますが、これを乗り越えることによって、5年先、10年先には明るい延岡市の展望が開けると確信しています。