
日本では高齢化が進み深刻な社会問題となっています。
高齢社会を安心して、生き生きと過ごすためには、介護保険などの社会保障制度だけでなく、地域全体で高齢者を支えていく必要があります。
延岡市内でも地域住民が連携・協力し、地域全体で高齢者を支える活動を展開しています。
ここでは、高齢者の生きがいづくり活動や見守り活動を中心に地域全体で高齢者を支えている市内での取り組みを紹介するとともに、その大切さについて考えていきます。
日本では高齢化が進んでおり、総務省によると全国の平成16年10月1日現在の65歳以上の人口は約24,876,000人、総人口に占める割合は19.5%になります。また75歳以上の人口は約11,067,000人で、総人口の8.7%を占めています。
延岡市では65歳以上の人口は31,078人(旧北方町・旧北浦町を含む平成16年10月1日現在の数値)で市の総人口に占める割合は、23.6%。また、75歳以上は13,873人で総人口の10.5%を占め、全国平均よりもやや早く超高齢社会を迎えたといえます。
このような超高齢社会を安心して、生き生きと暮らしていくには、地域住民が連帯して地域全体で高齢者を支えていくことが必要です。市内では高齢者の生きがいづくり活動・見守り活動を通して、高齢者に住み良いまちをつくる取り組みが各地で行われています。
延岡市高齢者クラブは市内に190クラブ(旧北方町・旧北浦町含む平成18年3月1日現在の数値)あり、会員数は8,243人。グラウンドゴルフやメンバーの誕生会などによって、地区内に住む高齢者相互の親睦と交流を図っています。また、多くのクラブが地区内の清掃や登下校時の子どもたちの見守りなど地域に貢献する活動を行っています。
市教育委員会では地域の高齢者がともに集い、学ぶことを目的に地域高齢者教室を、市内7カ所で開講しています。学級生は約350人、人権や高齢者の健康、環境問題といったことをテーマに、年10回の講座を各自治公民館を会場に行っています。教育委員会ではほかにも、市民大学、さわやかカレッジといった講座を催しており、高齢者から高い関心が寄せられています。
また、恒富高齢者コミュニティセンターでは、料理教室や着物の着付け教室、水墨画教室などを開講しており、多くの高齢者が受講しています。
![]() 川島地区高齢者教室の様子。この日は高齢者の交通安全について学習した。 |
![]() 川中地区の4地区が合同で行った敬老会。会の運営には地元の地区社協も協力した。 |
地域福祉推進チームは平成2年につくられた延岡市独自の地域ボランティア組織です。チーム数は平成18年3月1日現在、市内に196チームで2,861人が活動しています。おおむね1つの区を単位とし10人前後の班員で構成され、地域の高齢者の見守り活動を行っています。
また、延岡市社会福祉協議会、地区社会福祉協議会(以降、地区社協)、延岡市高齢者福祉協議会など各団体・組織が地域の高齢者の生きがいづくり・見守り活動を行っています。
これらの地域の高齢者を支えている団体・組織は、お互い協力・連携しながら活動を展開しています。
地域福祉推進チームは、民生委員・児童委員、区長、地区社協などと連携し活動しています。また、高齢者クラブと協力し会食や唄の練習といったふれあい事業を展開しているチームもあります。ほかにも区と地区社協とが協力し敬老会を開催したり、区と高齢者クラブが連携して会食を開いたりする地区もあります。
今後、ますます高齢化が進んでいくことが予想されています。超高齢社会を支えていくためには、すべての地域住民が協力していくことが不可欠です。
延岡市高齢者クラブ「八起会(やおきかい)」(中島町)
「あー、外れたわ」、「やったー、ホールインワンじゃ」とグラウンドゴルフを楽しむ姿は真剣そのもの。しかし休憩時間には、会で用意されたお茶とメンバーが気をきかせ持参したお菓子を楽しみながら笑顔があふれ、そして、ゲームが終わった後には、爽快感あふれる表情で額の汗をぬぐい「おつかれさま、またね」と声をかけあう姿が。
延岡市高齢者クラブ「八起会」は中島町の高齢者を中心に会員39人。平均年齢は約80歳、最年長者は92歳で、地域の高齢者の親ぼくと健康維持を目的にグラウンドゴルフや踊りの練習など週2回程度のペースで活動をしています。また、地区内の公園の清掃や黄色いリボンを胸につけ、登下校中の子どもたちを見守る「黄色いリボンの会」など地域のためにも活動しています。
ほかにも県外の1泊2日と県内の日帰りの旅行をそれぞれ年1回ずつ行っています。旅行のときに、集計したグラウンドゴルフの結果を発表し、上位の人やホールインワンを出した人に会費の中から賞品を贈っていますが、それを皆さん楽しみにしてると言います。
「八起会」会長の宮田光二さん(78歳)は「会の集まりをみんな楽しみにしているようです。集まりがない時は寂しいという声がよく開かれます。健康や気持ちにハリを持たせるためにもみんなで集まって何かすることは大切ですね」と話していました。
![]() 推進チームの「声かけ」はひとり暮らしの高齢者の安否確認だけでなく、いい気分転換になっている。 |
地域福祉推進チーム「愛宕推進チーム」(愛宕町)
「体調はどうですか?」「ええ、とてもいいですよ」と推進チームのメンバーの声かけにひとり暮らしのお年寄りが優しい笑顔でこたえます。
愛宕地区でこのような光景が見られるようになったのは愛宕推進チームが高齢者の見守り活動を始めた14年前から。今では推進チームの活動もすっかり定着し、この光景も当たり前のようになりました。
愛宕推進チームは平成3年に設立され、メンバーは現在14人。最低、過1回はひとり暮らしや病弱な高齢者宅を訪問し、安否確認や世間話を交えながら健康状態の確認などを行っています。時には、庭先の掃除を手伝うこともあるといいます。また、地区の高齢者クラブと協力し、毎週日曜日に踊りの練習やお茶飲み会を開いています。
推進チーム最高齢89歳の今別府末広さんは「本当は僕が訪問される立場かもしれないけど (笑)、活動を通してみんなと話しができることが楽しくて。地域は家族のようなもの、助け合っていかないといけません」と話します。
また、推進チームの代表を務める染矢茂さん(72歳)は「この活動の一番の目的は高齢者の孤独死を防ぐことです。そのためには、常に地域で高齢者を見守り、またコミュニケーションをとっていくことが必要です」と話していました。
高齢者にとって住み良いまちはすべての人に住みよいまちです

延岡市公民館連絡協議会
会長・沖田区区長
甲斐 伴幸さん
地域で高齢者を支えていく上で大切なことは、高齢者が困った時に区の役員など誰かに相談できる体制をあらかじめ地域内で作っておくことです。以前、区内のひとり暮らしの高齢者宅に、悪徳商法のセールスマンが訪ねてきました。その時、相談を受けた区内の住民たちが高齢者宅に集まり問題を解決したことがありました。
地域内で小さな集まりを設けるなど、コミュニティを作ることも大切です。沖田区では、区内の高齢者約30人が集まり、月1回団地内の掃除を行い、その後公民館でお茶飲み会をしています。また、10年以上前から、資源ごみの回収の日には組ごとに交代でごみの分別チェックを行っています。このように、地域の住民が集まることにより、地域内のさまざまなことにについて情報交換ができ、それが結果的に高齢者を守ることにつながっています。
地域内で連携し、交流を図っていく過程にはさまざまな問題や摩擦が生じることがあります。しかし、続けていくうち地域住民に理解されていきます。物事は前向きに考えることが大切です。高齢者に住み良いまちは、すべての人に住み良いまちなのですから。
地域住民が協力して高齢者を支えていくことが重要です

九州保健福祉大学社会福祉学部
福祉環境マネジメント学科助教授
井上 孝徳さん
今後、高齢者が増えることに伴い、要介護状態や認知症の高齢者が増加します。また、高齢者のみの世帯も増えるため、これからは要介護状態や認知症にいかにならないかという予防活動が重要になります。そのためには、福祉・保健・医療などの公的サービスや地域住民などすべての社会資源が一体となり、高齢者を支援する体制を築いていくことが必要です。
高齢者を支援するといってもその内容は多種多様です。医療や保健、介護だけでなく、ちょっとした話し相手や趣味、生きがいづくりなど一人ひとり異なっています。高齢者が生き生きと暮らしていくには、そのすべてに応えていくことが大切です。そのためには介護保険などの公的サービス制度で高齢者を支援していく一方、地域住民で支えていく必要があります。
これからの地域福祉を考える上で、身近な地域でさまざまな人や機関、組織などが垣根を越えて力を合わせ総合的な支援の仕組みを作り上げていくことが大切です。そして、そうした活動を通して新たなつながりを作り出し、まちや地域を生き生きとしたものにしていくことが必要です。そのためにも地域住民が協力して高齢者を支えていくことが重要なのです。
地域で高齢者を支えていくことの大切さ
「これからは福祉のまちづくりでなく、福祉でまちづくりです」と井上さんは話しました。これは、福祉の現場に、団体や組織の壁を越え多くの人が集まることで地域が活性化し、それによってすべての地域住民にとって住み良いまちづくりにつながるということです。
市内でも、さまざまな団体・組織が集い、協力し合うことで高齢者を支えています。そこでは、市民同士の新たなコミュニケーションが生まれています。
人と人がつながることで地域は元気になっていきます。地方分権化の流れのなか、これからますます地域の重要性が高まっていきます。地域で高齢者を支え、高齢者に住み良いまちづくりを目指すことは、すべての地域住民に住み良いまちづくりを目指すことなのです。
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